北村先生講演―今後の盆栽について
講演4
これは皆さんの生活の必然性としてだけでなく、美しさ、憧れ、優しい憧れとして「実物花物」ですね。その中にひとつの強さとして松柏類を置くと言うことも良いでしょう。
津山は盆地で樹種も個性も変種変異に非常に恵まれたところですから、赤松でも、美しく育って行くし雑木も多種物がどんどん分化してゆきます。
ウメモドキを拝見しても一本一本全部違いますね。
東京でのウメモドキは大納言一色ですね。津山の方はこうしていろいろ山採りの中でも一つ一つ美しさを楽しんでそれぞれ個性的みやびな盆栽をやっておられる。
技術的にも精神的にも考えて、津山の国土性をもういっぺん見直していただきたいと思います。
これからは「津山の時代」で良いものがどんどんできると思います。
7、8年前に皆さんが、赤松なぞ盆栽にならない、と言っていましたがどうでしょう。
この頃気違いになって赤松を追いかけている。(笑う)
そう言うひとつの「人間の心の移ろい」移り方という事に目を止められて、今後の盆栽樹形として、何が良いか・・・・。
松なら松、杉なら杉でも、今までの盆栽界ではただ若い姿だけを標準にして針金掛けで作られたのは、段作りですね。しかもそれが良いとなると、針金がかかっていればなんでも盆栽になると思っているのが日本人の悪い癖・・・・
そうなるとこの城の周辺にもありました様な開芯自然形柔らかい自然形のモミジまでも段作りにしてしまう。
津山にも以前はウメモドキの段作りがありましたね。私が初めて伺ったとき「こういう樹形はウメモドキに無い」と申し上げた。
今日拝見したら一つもないんでさすが津山の方は分かりが良いと思って拝見しました。
非常に良い個体を選ばれて株立ちに近いもの、あるいはその中から一本ポッと、引き抜いたのが、文人的な樹形ですね。
会場にあるものは非常に変わってきました。それが驚くことに赤松なども枯淡なものが、庭や自然の中でしか見られなかった様な盆栽が出てるじゃないですか、嬉しいですね。
今後の盆栽は本当に「無傷」のものです。
無傷の物って有り得ないとおっしゃる方が居らっしゃるでしょうけど、そういう場合は、山の木をご覧下さい。「なぜこの枝は枯れたのか、何故ここで幹は枯れたのかと言う様に、もう少し盆栽界は、皆んな合理的なものの考え方を持っていただかなければ、今後の発展は無いと思います。頭が悪いんですね。物まねばかりで・・・・(笑い)
今これだけ盆栽人口の底辺が広くなって日本全国の盆栽が盛んになりましたけど、私はこの「盆栽」という言葉ば嫌いです。
「私の趣味は盆栽です。」とは言いたくないです。
「盆栽」というイメージが「苛めつくされた」とか「ネジ曲げた」とか「ヒネコビタ」と言う様に「盆栽的な人間」とか「盆栽的な何か・・・・」とかいろいろ悪い方の例に言われる私はなにか妙な気持ちがします。
そう言う意味から「盆栽が趣味」とは言ったことがなかったのです。
雑誌をやるまでは、私が盆栽をしていることを知っていた人はほとんどなかったです。
岡山で言えば私が師事し、私が社長で彼が十年も常務をやってくれた、この間亡くなった柴田錬三郎だとか司馬遼太郎や黒岩重吾や先輩の海音寺潮五郎さんや中山義秀さんなんかも私の家へ来るまでは知らなかった。
「ナンダ植木屋みたいな盆栽が一杯あるな」って吐きやがったことがありましたけど、それほど盆栽をやってますとは、恥ずかしくて言えませんでした。今もって言えませんよ。
戦前の古い佳き日本の足元を見詰めた上での盆栽の概念が薄れてきてしまいました。それには京都の人とか松山だとか奈良、そしてこの津山などというそういう古い都の人達みやびた風土に生活して来た人たちが先達となって、もう一度自分の足元を見詰めていただいて、現代盆栽の気狂いになっているひとには判らないですけれど・・・・大きな展覧会なんかの観客を見ていただくとよく判ります。いわゆる一般の上品な素人の人々の眺めている盆栽は、無理をしていない自然な盆栽で針金巻の太くて短い段作りの様な人工盆栽を見ているのは人品の卑しい盆栽狂です。(笑)
盆栽気狂いでも、悪い気狂いは目つきが違いますね。(笑)
欲深な眼でね。こぎたなく(笑)
まぁそういう時代が来たわけですから、まず自分の住む風土とそこに生きる美しい植物をまず素直に見直していただきたいと思います。
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ハサミを使わないで枝を調整する
なるべくハサミを使わないで、爪だけでやったほうが厭味のない盆栽ができます。
爪で折れないほどの太い枝は、葉を抜いて枯らします。
葉を抜いてもまた吹いてきますから何回も繰り返し、物によっては三年・四年がかりで枯らし、完全に枯れてから適当なところでポキンと折ると、幹の芯まで枯れ込むことがありません。
ちょっと待つ気持ちが大事で、盆栽作りにはハサミはいらないと言い聞かせなるべく手造りが良いでしょう。
自然盆栽協会「盆栽」より