北村先生講演―今後の盆栽について
講演7
盆栽作りに於いて、私は二十年位無駄なことをやって来たんです。でもこの十八九年は無駄なことをやって来ておりません。自分でまず「盆栽とは何か」ということを常に考えています。「私の盆栽作り」と言ったら、おこがましいんですが「自然盆栽とは何か」と言いますと、それは「ひとつの生命力を上手に誘発しながら、その樹の持つ個性を引き出して生かして行く」という事でそれは「一鉢の中で美しい塾根塾枝に完熟せしめる」事です。そして盆栽にはそれしか無いのです。
人生も与えられた資質と環境境遇のなかで一瞬一瞬を自分らしく充実させて生きてゆくことしか無いのです。
そうゆう積りで種を蒔き、私が手伝ってその樹を育てて行く様にしてきているのです。
私は針金を巻いたのが好きなんだという人もいらっしゃると思います。それはそれで私は良いと思います。もうこういう時代になりますと、無個性時代ですから、どうでもいいんで、私の住んでいる人達とは違う世界で住んでいる、あまり不躾に言うと、当たり障りがあるんで、一寸遠慮して言いますけど、(笑)余談ですが私は特に一つでも年上の方には一枚位着せて言いますけど、年下には本当に歯に衣を着せずにわざと言います、盆栽に対すると同じように。
私より古い盆栽には、大変敬意を表するし、枝を切ることでも一瞬ためらってですね、明くる日切る様にしています。(笑)
私は盆栽と共存共栄して居る心算ですけど、お帰りになったら、そうゆう事を考えて盆栽を今一度改めて見てあげていただきたいと思います。
もう一つ、では私が、その為に、どういう方法を講じてきたのかを、お話しようと思います。
いろいろな盆栽の本なんかに、やれ肥料だとか、剪定だ、とか、いろいろなことが賢しらげにかいてありますけど、そういう一つの悪い習慣に従って「悪い習慣」ですよ(笑)
習慣の順序に従って話を進めて行きたいと思います。
植物の生態を知って盆栽を作って行かなければならないので、部分的に肥料とか水とか、針金とか言いますけどね、やっぱり皆さんの顔がひとりひとり全部違うように、一本一鉢が皆違うのですから一様にやるわけには行かない訳です。(昨日も話しした様に)
陽のあたる所と当たらないところ、風の通るところと通らない所、それから高いところ低いところ、夕方に湿度が上がるところ、湿度が冷えるところその逆とか。またその人の癖が有ります。やたらに大きい鉢に植えたがる人、やたらに肥料をやる人、切る人、針金気狂い・・・・(笑)
その両方をかね合わせて考えてゆかねばいけない。
概して皆さんの鉢が大きすぎますね、盆栽の。みなさんの拝見した盆栽は、だいたい土が半分くらいで良いんじゃないですか、これは、あんなに大きな鉢に植えたら美しい盆栽が出来る訳がない(笑)
しかも肥やしをやって、ドバドバ水をやってですね、軟化野菜をを作っているみたい。(笑)
ですからまず鉢を小さくしてください。
いくらみなさんが上手に針金を掛けられたと思っても、その気の持つ独特な曲線と同じく、針金を掛けることは絶対に不可能です。私は自分でやって知っています。ですから、その樹の持つ曲線を壊さないためには、引っ張りやつっぱりが一番良いが、巻きたければその曲がりに習って針金をかけていただく。
さっきもいくつかありましたけど「嘘つき枝」ですね、昔は警察に連れてゆくと手が後ろに回ると言われ、今はどうゆう手錠の掛け方か知りませんけど、その前方の枝を後方に曲げてある。
それはネジって持ってゆくのではなくそのまま後ろにやるんですね、ああゆう残酷なこと、ああゆう醜いことはなさらない方が、あの樹の為には良いと思います。
そういう嘘つき枝という技法は、昭和12・3年ころから非常に流行ったものです、私の記憶では。
ですから同じ針金をかけるにしても、その木の曲線を念頭に置いて行う。
枝先の曲線から、根の曲線は非常に相似した曲線を持つものです。
似たような形、それで治まって、行くのが盆栽の終極の美しさじゃないですか。
嘘つき枝みたいな事しなきゃならないのは結局大きい鉢に植えていらっしゃるからです。なるべく小さい鉢でつくった方がいいということです。
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ハサミを使わないで枝を調整する
なるべくハサミを使わないで、爪だけでやったほうが厭味のない盆栽ができます。
爪で折れないほどの太い枝は、葉を抜いて枯らします。
葉を抜いてもまた吹いてきますから何回も繰り返し、物によっては三年・四年がかりで枯らし、完全に枯れてから適当なところでポキンと折ると、幹の芯まで枯れ込むことがありません。
ちょっと待つ気持ちが大事で、盆栽作りにはハサミはいらないと言い聞かせなるべく手造りが良いでしょう。
自然盆栽協会「盆栽」より