一年の計画(自然と盆栽22号)
一年の計画
梅や蝋梅が寒さの中に香り、松や福寿草の飾られる、正月がまたやってきた。
暖房設備も豊かになって冬は温かくなり、食膳には一年中トマトやキュウリが現れて、全くの季節喪失時代ではあるが、盆栽を楽しむ我我には恵まれた四季の移り変わりがあって生きる日々の証明を確実に教えて呉れている。
二年続きの、悪天候で人体も盆栽も疲れているが、外見ではよくわからないので充分に注意をし、自然の摂理に逆らわず、分に応じた養生をしながら抵抗力をつけておきたい。
大寒波が日本列島を襲うと、予報されているが、悪い予報を信じておいて、準備するに越したことはない。
戦後の日本は平穏であり、恐ろしい程に恵まれすぎて居た。人々は個性を失い、飽食する養豚のようになり、盆栽も画一化した速成野菜のように、味も姿も失いかけている。
悪天候と不況を、又とない妙薬にしたい。
盆栽作りには絶対必要な条件を列記してより良く美しい皆様の盆栽のためにと・・・・。
①初心に帰ろう
ひと握りの知識と経験を得たり、幾つかの良い盆栽を買ったりすると、ついしたり顔になり、盆栽のことなら何でも知っている様な、大きな錯覚に陥り大言壮語するだけで、分相応に樹格を悪くしてしまい。流行と価格を追うだけの亡者になる人が多い。
初心者の頃の盆栽に対する喜びと、四季に生きてゆく美しさへの驚愕の心には、清純そのものがあった筈である。
花の美しさ、葉の清々しさ、新芽の初々しさ、伸び繁るうれしさ、そして育ってゆく明日への希望が、初めて盆栽を知った
、初心の感激であった。
この初心の感激こそが、盆栽の本当の魅力であることを、改めて考え直してみたい。
②一木一草の個性を見出そう
つまらないと思う、どんな一本の木でも、絶対に美しい個性は必ずひとつ以上持っているものである。そしてその美点を強調し表現するように導いてやれば何時の間にか名盆栽に出来上がってくる。経ってみれば、年月の流れは早く、盆栽が古色を表してくるのも、振り返ってみれば、あっと言う間のことである。
どの一鉢に対しても、研究心と愛情で接しながら「私の盆栽」と言える、個性のあるものを仕立てて戴きたい。それが盆栽の醍醐味である。
決してアリフレタ盆栽はマネまい。他人のものを羨ましがるよりも、まず自分の盆栽の個性見つけ、価値ある盆栽に仕上げる為に、目と腕と心を養って行たい。
それには、謙虚で素直な幼児の心にかえり
無理をしない・・・・金銭と技術と感情の上で
学び取る・・・・・・観賞眼と培養整姿の技術を
失敗を恐れない・・・屁理屈よりも実際の経験だ
眼先の慾より・・・・大欲を持って今日を大切に。
③用土を惜しまず。
空気の通らない、排水の悪い用土に植えても、盆栽はできない。
根が丈夫に細かく美しく張らなければ、盆栽ではない。
冬のあいだに、春に植え替える用土を、必ず準備して置くことが重要である。
草花や生花は、消耗品として、見頃の時だ時期だけ枯れなければ、それで良いだろうが、盆栽は生きた美術品として日々楽しみ、四季の移り変わりと、年月とともに樹格を上げる喜びも、長年のあいだ感得するものであり、又、人間の寿命より永い、数十百年生命を持つ樹木盆栽の、生命の母胎である用土は、適応したものを、是非とも使用して欲しいと願う。
用土は安いが惜しめば高価につく。
用土は気候風土と地方によって、驚く程異なるので、土地の経験学識ある盆栽家にたずね、自分の生活に適合した用土を早く知ることが大切である。
用土で注意すべきことは・・・
通気と排水が良い粒土を必ず使用する。
・ミジン粉1.0~0.5ミリ以下は必ず抜き捨てる
・二種類以上の用土を適度に混合して使用。
・買った盆栽の用土を調べてから管理し、後、早期に自分の得意な用土に植え替え、他の盆栽と同じ条件にしてから、ならし培養整姿すること。特に他地方で買った鉢は注意しないと買ってスグ枯らすことがある。
④戸外の棚上で作る
健康な日本の植物の盆栽は、陽と風と雨の当たる戸外の、空中に作られた棚上で作らなければならない。地上に置いたり、地中に鉢を埋めたり、また軒下や保護室に入れるのは、種を蒔いた鉢、挿し木鉢、苗鉢、弱った盆栽や植え替え直後、種子床鉢などと、冬の管理の為等である。
潅水が大変だ、と云って地上に置いたり、地植えにしている人が多いが、あれは盆栽にならない、それはどうしても、通風が悪くなり、土が跳ねて幹や枝葉に着き、陽も当たりにくく、上ばかり伸びようとして、下枝や懐枝弱って枯れようとし、一部ばかり勢力がかたよるので盆栽になるわけがない。又、畑や露地植えは苗木作りの一二年は良いだろうが、それ以上は、よほど高植えにして、年に一二回は走る根を切って植え替え、強い枝を透かし切りするなど、相当の経験と技術がなければ、到底、盆栽にはならない。
野菜のように、肉柔らかかく、太く、大きく、直線部分が多く、腕伸びたものや、切り傷のあるものは、駄物かゲテモノ鉢であって、盆栽ではない。又大傷は十年経って傷は塞がっても、傷跡が永年残って醜く、名盆栽には程遠いことを知ってほしい。
⑤上部は小さく細く
どこへ行っても、惜しがって細いうちに上部を切らずに頭でっかちにしてしまつて、もうどうにもての施しようのない様な樹が多い。
頭は、いつでも、どうにでも、急速に作れるが、下部の下枝や幹や立ち上がりは、なかなかよく太らず、作りにくい。
上部はウンと抑えないと、下部の数倍も数十倍も成長する。芽摘み、葉がり、は透かし、若枝切りを上部や強い枝だけに行い、一二年枝のうちに切り透かして、枝や葉を少なくして勢力を弱め、下枝に陽や雨風を当たるようにして元気にすることが、盆栽整姿のコツである。各枝の勢力配分が整姿の要点で、数年先を考えて、現在の姿としては少し淋しくなる位に上枝を透かした程度がちょうど良いのである。
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ハサミを使わないで枝を調整する
なるべくハサミを使わないで、爪だけでやったほうが厭味のない盆栽ができます。
爪で折れないほどの太い枝は、葉を抜いて枯らします。
葉を抜いてもまた吹いてきますから何回も繰り返し、物によっては三年・四年がかりで枯らし、完全に枯れてから適当なところでポキンと折ると、幹の芯まで枯れ込むことがありません。
ちょっと待つ気持ちが大事で、盆栽作りにはハサミはいらないと言い聞かせなるべく手造りが良いでしょう。
自然盆栽協会「盆栽」より