北村先生講演―今後の盆栽について
講演6
そしてある一定の大きさの中で交代して行きます。それで「おさまった状態」を、私は「熟する」と言う言葉を使っています。塾枝、塾根と言っています。
パーとまっすぐに伸びた若い枝、徒長枝には花が来ませんね。ある程度の年代になって、大人に成った枝に花も実も成るという事で、根も同じです。
盆栽界の中では根の探究が全然忘れられています。「根元から根の先までか、幹元から枝元までと同じように美しい姿になり根の先まで熟する」
ことが、盆栽の究極の目的なのです。それが「自然美」であります。
自然の木を見てますと、大きい小さいに、かかわらずですね、根の先まで熟し、枝の先まで熟した姿が、盆栽の終極の姿であり、我々は、それに向かって努力してゆくんじゃないですか・・・・(会場厳粛な雰囲気)
特に津山の方は、山採りが出来ますし、恵まれているのに、私に言わせれば何か皆さん錯覚をしてですね、ウメモドキでも一つのものはこの世の中にたった一本しか無いはずなのに「こんなものはいくらでも有ります」と言われる。
(笑)それは一寸間違いなので、同じものは同じ個性を持った個体は一本しか無い、そしてその個性を見抜き、見分けて尊重して世界中に一本しか無い美しい姿に作ってゆくのが、本当の盆栽なのです。皆さんの顔が違うように皆違います。また種を蒔けば、親樹と同じものが生えてくると思う人が多い。有名な植物学者が、私の家の松の実をとってですね「先生此れをください」、「どうぞ」「ああこうゆう松が生えると嬉しいですね。」とニコニコ笑っている・・・・。「あなた冗談じゃない親樹と同じものが生えるわけがない」でちょっと考えて「ああそうですね」
「確かに母樹の特性や系統はたいへん引きますから、似たような物は出来るかもしれませんけど」という様なこともありましたが、皆我々は誤解をしていたのですね、山に行けば幾らでもある、という考えが。
山採りなさってわかると思いませんか。木々はある一定の大きさになると、もうそれ以上大きくなりませんですね、そしてその大きさの範疇で美しくなって行こう、一年でも生き伸びようとする姿、あの姿が我々の求めている「美しさ」なのですね。
その中にある生命力ですね「生命力を感じないものは盆栽じゃない」と思うですね。
針金を、グリグリ巻いてですね、あんなもの、生命力を感じる資格はないと思いますね。(笑)
私は20年ほど前まで針金を散々やったからこそ如何に無駄で馬鹿げているかということを言えると思います。「樹の宿命」と言うのがある訳です。人間にも有るけれど、此の一本の樹の持っている個性を十分に発揮させる。
樹を一緒に楽しみながら、一緒に手助けしながらですね。
盆栽は私たちを慰めてくれますね。
我々はこの盆栽に水をやったりして、お互い貢献し合う気持ちでその「個性を発揮させる」と同時に「自分の個性もそこに発揮してゆく」というのが、今後の盆栽ではないでしょうか。
我々はどんな立派なものでも金でも、地位や名誉も持っては死ねないのだ、ということを深刻に考えて、物事を行って頂きたいと思います。
今一瞬一瞬が大切なので、今やろうとか明日考えようと言うことはなさらずに、今現在行うということですね、今こうした現在出来得る最善を尽くすのが、盆栽ではないかと思います。
夢として、来年はこうしよう、再来年はこうしよう、その次はこうしよう、とういう場合、生きていたならば、という感覚ですね。
若い人にも、そういう気持ちを持って貰いたいと思います。
此処にも若い人がいらっしゃるですが、何か話を聞いていますと、何か自分だけは百歳か二百歳までも生きる積もりで居るんで(笑)そんな気持ちで盆栽をやっていたら、ろくな盆栽はできません、ただし夢のあることはしなきゃいけないですけど、自分は今現在死んでも良い、悔やまない、という位、自分に嘘をつかない気持ちで盆栽にも接しきってゆくそれしかないじゃないかと思うのですが、どうでしょう皆さん。
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ハサミを使わないで枝を調整する
なるべくハサミを使わないで、爪だけでやったほうが厭味のない盆栽ができます。
爪で折れないほどの太い枝は、葉を抜いて枯らします。
葉を抜いてもまた吹いてきますから何回も繰り返し、物によっては三年・四年がかりで枯らし、完全に枯れてから適当なところでポキンと折ると、幹の芯まで枯れ込むことがありません。
ちょっと待つ気持ちが大事で、盆栽作りにはハサミはいらないと言い聞かせなるべく手造りが良いでしょう。
自然盆栽協会「盆栽」より