はじめての人でも楽しめる自然盆栽
必然性・個性・らしさ
木や草は育つ環境によって枝の伸びか方や育ち方がぜんぜん違ったものになります。
広々とした平原で育った木は成長の仕方も早く、大きく育ち枝は間延びしすくすくと育ちます。
また厳しい環境、たとえば高山のように強風や根の張るスペースが少ないところなどは成長するスピード(大きく育つなど)も遅く強い風が常に吹いている状態などのときは枝が自然と風の吹く方向になびいて育ち幹なども少しずつ傾いて育ちます。
このように育つ環境(風土・環境・気候など)によって育ち方が違うことを「外的必然性」といいます。
山野を歩いてみますといろんな樹種の木がそれぞれのところに生え生育しています。
ヤマツツジ・万作・赤松・スギ・椿・カラマツ・もみじ・梅もどき・リョウブ・ヤブコウジ・・・
それぞれの木の持つ特徴として姿かたちが違います。
スギはスギらしい姿かたちがありヤマツツジはヤマツツジらしい姿かたちがあります、また同じ「もみじ」でも葉の形、大きさ、幹の状態、枝の伸び方などそれぞれ特徴があり一本一本違いがあり特徴があります。
このようにそれぞれに持っている「個性」があります、そのことを「内的必然性」といいます。
自然盆栽では外的必然性である「環境」や木の持っている「個性」を大変重要視します。
それぞれの個性を手助けしながらより「個性」を際立たせ、育てるのが「自然盆栽」であるといえます。
私が当初「盆栽屋」さんによく言われたことはこの「らしさ」という言葉で今も特に記憶に残っています。
「梅もどき」らしさ「もみじ」らしさ「ヤマツツジ」らしさ「らしさ」とはその木の持っている「個性」であり「環境」による育ち方だよと説明を受けました。
熟根・熟枝
自然盆栽では地上部と地下部、根と枝はとても大切な相関関係にあるといわれます。
いくら地上部を整えても根の部分でちゃんとした美しい状態の根ができていないと美しい地上部はできない。
このことについても「盆栽屋」さんで教えていただいたところですが一般の盆栽書などは整枝といえば幹の状態、 枝順・表・裏・忌み枝などなど表面に出ている部分だけを捉えてみているだけで、根の部分についてはおろそかにされています。
徒長した枝に「針金」を巻きつけて矯正し作っていたり、たたずまい、らしさ、個性などといったことについてはどちらかといえばおざなりにされています。
もっといえば無頓着で見た目だけよければという考えが横行しているように見えます。
「自然盆栽」では「熟枝」「熟根」と相反する言葉として「徒長枝(とちょうし)」「徒走根(とそうこん)」という言葉を使っています。
美しい自然な枝ぶりや佇まい、根張りは「自然盆栽」を作るうえでとても大切な要素で日ごろの手入れ(芽摘み・芽切り・葉刈り・剪定・用土・鉢の選定)の作業の中で常に念頭において作業をする必要があります。
次のことも盆栽屋さんにいつも言われたことですが、強い枝を残すのではなく弱い枝を残し「弱い枝」から「弱い枝」と作って行き、強い枝(徒長枝)は剪定することが大切です。
また根の場合も同じで強い走り根(徒長根)は一度に切るのではなく様子を見ながら少しずつ剪定してゆくのがいいとのことでした。
「徒長枝」や「徒長根」を出さないためには育てる上で鉢の大きさ・用土の質・配合・みずやりの加減・肥料・日の当たり方などを考える必要があります。
熟根・熟枝で作られた木はとても自然で美しく短期間で見られるようになるということです。
熟根(じゅくこん)
栄養をよく吸収する根で、個性的で美しい佇まいがある熟枝を作る根で、外見は複雑な曲がりがあり色は一般的に茶黒く艶がなく細くしまっている
徒走根(とそうこん)
直線的で鉢の中を伸びまわり、若々しくつやがいい根、どちらかといえば太り気味の根のことで 熟根とは正反対の根のこと。
熟枝(じゅくし)
直線的ではなくどちらかといえばくねくねと曲がって伸びている枝のことで一般的には艶はなく細くしまっている。 樹肌が早く荒れてくるまた節と節との間が狭く、その気の持っている独特の個性を現してくる。
徒長枝(とちょうし)
芽のうちから艶があり充実しており、伸びだすと節間が長く太く艶のある直線的な枝になる。
相関関係にある
とても大切な相関関係にある「根」と「枝」です。どちらを疎かにしてもバランスを崩し美しい「自然盆栽」はできません。 「熟根」が多く育てば「熟枝」も自然と育ってくるということになります。 根の捌き方、土の種類、土の圧えかた、水のやり方、肥料などにより根を「熟根」に育つようにすることで「熟枝」が育つようになります。
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また記述内容の質問なども「自然盆栽」に関しては受け付けておりません。
この記述は私個人の覚書として記述しており私個人が利用することを念頭に掲載しております。そのつもりでお読みください。
ハサミを使わないで枝を調整する
なるべくハサミを使わないで、爪だけでやったほうが厭味のない盆栽ができます。
爪で折れないほどの太い枝は、葉を抜いて枯らします。
葉を抜いてもまた吹いてきますから何回も繰り返し、物によっては三年・四年がかりで枯らし、完全に枯れてから適当なところでポキンと折ると、幹の芯まで枯れ込むことがありません。
ちょっと待つ気持ちが大事で、盆栽作りにはハサミはいらないと言い聞かせなるべく手造りが良いでしょう。
自然盆栽協会「盆栽」より